「思っているより深刻だよな。僕は……」

「詩月は運が良いよ」

「それは感じている。いつだ？　シュテファン広場のストリートピアノが撤去になるのは」

「えーと……そう何日も先ではなかったと思うけど」

「撤去される前に演奏、生配信はどうだ？」

「いいね！」

「合奏するのもいいよな」

「撤去を惜しむ演奏者はたくさんいるよ、きっと」

「日本では合奏したり、合唱したり、弾き語りするのは禁止なんだが」

「もったいない」

「僕はいつでも。ビアンカの都合は？」

「えーと……明後日ならＢＡＬが休みだし、ミヒャエルにも声かけしておくよ」

「ＯＫ」

「体調、しっかり整えておきなよ」

詩月はビアンカに言われて苦笑いした。

「それから演奏、無茶しないようにね」

整えてどうこうなるものでも、無茶しているつもりもないのになと思った。