アイスココアとコーヒー

近くで秋祭りがあるんだって。
クラスメイトの誰かが言っているのが耳に入る。
夏祭りの日は、私が母方のおばあちゃんの家に帰る日と被ってしまって結局行けなかったのだ。
行きたいな。優太くんと2人で。
そんなこと言ったら困るかな?
……でも行きたいものは行きたい!!
ふー、と深呼吸をして心を落ち着かせる。
「優太くん」
「ん?どうした?」
全てを包み込んでくれそうな優しい声に、ドキッと胸が跳ねる。
「あの、あのね。秋祭り……行かない?」
ドキン、ドキンと心臓のなる音がハッキリと聞こえてくる。
「いいよ、行こっか」
「え!ほんと!?いいの!?」
「うん。俺も帰ったら誘おうと思ってたし」
先越されたなーと笑っているその笑顔が可愛らしい。
愛おしいとはこの事か。
新しく感じた気持ちを胸に、帰ってすぐに着替えて秋祭りへ。
横並びになって歩く初めての道。
こんな風に、たくさんの喜びを増やしていきたいな。
「結構人多いね」
「ね、想像以上かも」
神社の境内にはお祭りだなと関心してしまうほどの人が溢れていた。
「はぐれたら困るし、……手、繋がない……?」
……え、手?
うそうそ、優太くんがそんなこと言ってくれるなんて……!
「……繋ぐ」
待って待って、手汗とか大丈夫?自分じゃわかんないよ。
でも断るなんて選択肢はなくて、バレないようにスカートに手のひらを擦り付けて優太くんが差し出してくれた手に重ねる。
大きくて骨ばった、男の人らしい手。
優しく包み込むように、でも力強く握られるその手に、優太くんも私のこと……なんて考えてしまう。
そんなこと、あるわけないのに。
何食べる?あれ食べたい!
楽しそうな会話を聞きながら、私達も……なんて思うけど、期待と不安が入り交じって上手く話せない。
こんなの、入学式以来だ。
「詩?どうした?具合悪い?」
急に立ち止まったかと思ったら、顔をのぞきこんで言われる。
「ううん、大丈夫だよ。……何食べようか、迷っちゃって」
「……そっ、か。何食べる?」
自然に、自然にと周りを見渡すと、秋だからか石焼き芋の屋台を見つけた。
「あれ食べたい。焼き芋」
私の一言で、また本殿の方へと足を向けた。