「羽実?」

差し出されたままの手を、未だ重ねることができずにたらたらと冷や汗が流れて来た。

て、手を出して…っ

繋ぐだけっ

別に減るもんでもないし、たったそれだけ…!

自分に言い聞かせ、すぅーっと息を吸った。

「お願っ」

「観覧車乗らない?」

「え?」

お願いします!って意気込んだのに、白くんが手を下ろした。

今度は私の手が繋がれなくて困ってる。

「デート中手を繋がないと減点って学園長は言ってたけどさ、まだ出会って間もないのに手を繋いで仲良くデートって言う方が難しくない?」

「…それは、そうだね」

「だから観覧車乗ろうよ、そしたら繋がなくてもバレないし」

ねって、白くんが微笑んだ。

太陽の光に照らされて眩しかった。

だからそのせいかな、やたら胸に響いてきたんだ。

観覧車に乗った。
あまり並んでいない観覧車はすぐに順番が来て、向き合って白くんと座った。

…これはこれで緊張するんだけど。

「見て、あっちなんかキャラクターがいる!」

「あ、ほんとだ!」

「キャラクターとかもいるんだりぼんランド」

「白くん来たことないの?」

「うん、記憶の限りは」

遊園地とかテーマパークとか大好きな私はりぼんランドだって何度も来たことあって、みんなそうかなって思ってた。

でも白くんはそうじゃないんだ。

「こうゆうとこ好きじゃない?」

「そんなことないよ、好きだよ。でも親があんまり連れてってくれなかったから」

そっか、お父さんとお母さんがあんまり好きじゃなかったのかな。

「あ、ねぇねぇ!俺チュロス食べたいんだよね、ずっと気になってた!羽実食べたことある?」

「あるよ、甘くておいしいの!白くんないの?」

「うん、だから実はすっごい楽しみにしてた!」

入り口でもらったマップを見ながら窓の外と見比べて、あっちの方かなぁなんてチュロスの売ってる場所を探してた。

白くんはチュロスもないんだ。

私は白くんのこと、知らないことばかり。

だから少し手を繋ぐのが怖かった。

「ねぇ白くん!」

「ん、何?」

「こないだの歓迎会…あんまり風船割れなかったから、質問ちょっとしかできなかったよね」

「うん、そうだね」

「あの…、だから今質問しない?」