無口な担当医は、彼女だけを離さない。



「あー…違う。ごめん。無理に聞き出したいわけじゃなくて」

「無理、してないです」

「いや手震えてるし」



…あ、ほんとだ。


自分が気づかないのに他人が気づくって。情けない。



「話したくないわけじゃないんです、でも…話そうとするとこうなっちゃって…。ゆっくりならきっと話せます」

「…そう?」



私はお母さんのことからゆっくり話した。


時々息が詰まりそうになったけど、柊さんは待っていてくれた。


でもやっぱりあの医者のことを話す時だけは耐えられず、涙が出た。


泣くつもりなんかじゃなかったのに、昨日みたいに止まらなかった。



「分かった。嫌なこと思い出させてごめんな」



私は俯きながら首を横に振る。