無口な担当医は、彼女だけを離さない。



***

突然騒がしい声達が頭に入ってきて、耳を塞ぎたくなる。


世那くんの家ってこんなにうるさかったっけ…いつもは静かなはずなのに、どうしたんだろう。


あ、そういえば私熱出してたんだ。ってことはここ、もしかして病院?


恐る恐る目を開ける私。目を開ける前はたくさん人がいる気がしたけど、いざ周りを見渡すと誰もいない。


世那くんさえもいなかった。


部屋の色やベットの周りの機械から病院であることは間違いない。私…昨日どうしたんだっけ。


お父さんの葬儀が終わって寝落ちしたら熱あって…そこからの記憶がほとんどない。


体を起こしてみると腕に点滴が刺さっていて思わず目を逸らす。


なんか腕が痛いと思ったのは点滴のせいか…。



「あれ起きてる」

「世那くん…ねぇ私昨日どうしたんだっけ。熱出ててしんどかったのは覚えてるんだけど」

「元気になったのなら何よりです。はい点滴抜くから貸して」



私の部屋だと分かっている世那くんはノックもせずに入ってきた。びっくりするから嫌だけど。


世那くんは私の腕に刺さっている点滴を抜き、聴診をする。



「ん、もう大丈夫だわ。しんどくない?」

「昨日と大違い。久しぶりにしんどかった。もう平気だけど…」

「ならいいや。午後には退院できると思うから先帰ってな。あ、今日はバイト行くなよ」

「分かってる」



熱も下がって世那くんとも普通に話してたからちょっと忘れてたけど…もう長野には行かなくてよくなっちゃったんだね。


バイトにも毎日入る必要ないし、週末は家でゆっくり眠れる。あ...もう日払いにしてもらわなくてもいいんだ。


嬉しいことなんだけど…もちろん素直には喜べない。