無口な担当医は、彼女だけを離さない。



「…世那くん。ありがとう」



私は番号を打ち込み、電話をかける。


よく見るとやっぱりこの字は清水さんの字だ。


世那くんが清水さんから受け取ったんだから当たり前だけど、施設の時この少し雑な字が好きだったことを思い出した。


約5コールで清水さんは電話に出てくれた。



「もしもし」

「清水さん、私…です。斎藤栞麗です」

「栞麗ちゃん?嘘…私、ダメ元で渡したのに」

「番号、ありがとうございます。それと…さっきはそっけない態度ですみません」

「そ、そんな。むしろ話しかけちゃってごめんね。私なんかもう話したくもなかったと思うのに…」



清水さんの声はすごく申し訳なさそうであの頃と全く変わっていなかった。


嘘がつけなくて優しくて感情が豊かで。そんな人に私は辛い思いをさせてしまっていたんだな。




「…清水さん。大丈夫です。私分かってます。清水さんは悪くないです」

「ううん栞麗ちゃん、私は本当に謝らなきゃいけないの」

「施設長の人に言われたんですよね?この件はなかったことにするって。あんな圧力見ただけで分かります」

「本当に、ごめんなさい…私はあなたを守れなかった」

「そんなことないです。清水さんは…あの施設の中で唯一私の味方でいてくれました」



清水さんが電話越しにすすり泣いているのを感じて私まで泣きそうになってしまう。


もちろん私の高校時代は最悪だし、きっとその時の記憶は死ぬまで私の頭にこびりつく。


けれど清水さんという味方が1人いてくれたことは少しの救いだった。


むしろ清水さんだって大人達に苦しめられた人なんだから彼女をこれ以上責めることなんかできない。