無口な担当医は、彼女だけを離さない。



「じゃあ…お父さん。また来るからね」

「遠いんだからそんなに気使うなよ」



話しているとあっという間に時間は過ぎ、気が付けば新幹線の時間が迫っていた。


せっかくお父さんと話すことができたのにもう離れなければいけないのが心寂しくて仕方ない。



「柊さんも、わざわざありがとう」

「いえいえこちらこそ…」



目に焼き付けるように私は病室のドアが閉まるまでお父さんの顔を見続けた。


そんな私の前で無情にもドアはパタンと音を立てて閉まる。


閉まる音が無性に悲しくて泣きそうになる。もし…これが最後だったらどうしよう。


そんなことを考え始めると本当にキリがない。


受け入れなければいけないと思ってお父さんの前では堪えていたけど、そんなに簡単に信じられるわけがなくて。



「大丈夫か」

「ごめ…っ、行こっか。世那くんもわざわざありがとね」

「栞麗ってほんとにお父さんっ子だったんだな。話聞いてたら思った」

「小さい頃は…そうだね。典型的なお父さんっ子だったかも」



お父さんっ子でもあり、お母さんっ子でもあるというか…私は両親に恵まれていたと思う。


子供が私1人しかいなかったこともあり両親は私のことをたくさん愛して育ててくれた。


2人が離婚したのが私が6歳の時。記憶がなくてもおかしくないくらい小さい時の話なはずなのに、私は明確に覚えている。


だからお父さんが家から出て行った時は何日もお母さんに泣きついていたのも覚えている。


今思うとお母さんはどんな気持ちだったんだろうか。泣きついてくる私を見て何も思わないわけがない。


お母さんだってお父さんが病気になって不安で悲しくてたまらなかったはずだ。


それなのにお母さんは私のことを親として15歳の時まで守ってくれた。


どれだけその後に辛いことがあっても私は両親が大好きだったからここまでこれたのかもしれない。


だから私はこれから先も2人のことが大好きだし、今なら胸を張ってお父さんとお母さんの子供でよかったと言える。