「見て、分かるだろ?」
「…だ、やだ…そんなの、嫌だ…っ。信じない…っ」
「ごめん…でももう充分なんだよ。栞麗の顔も見れたし、もう悔いはない」
嫌だ。そんなこと言わないで。私の方が悔いありまくりなのに。
頭の中ではたくさん言いたいことがあるのに泣いているせいか頭が回らない。
何も言葉が出てこない。
「…そこにいるのは…彼氏か?」
「え…」
「あっ…すみません…」
私の後を追いかけてきた世那くんがドアの後ろに立っていた。
申し訳なさそうに顔を出している世那くんを私の隣に座らせるお父さん。
「あの、やっぱり僕外に…」
「いい。世那くんもここにいて」
「…分かった」
どれだけ私が駄々をこねてもお父さんの病気は治らない。もう私はそれを受け止めるしかないんだ。
すごく苦しいけど最後くらいお父さんに安心してもらいたいから、腹を括る。
「お父さん、彼氏の柊世那くん。私より7個年上のお医者さんなんだけどほんとに過保護で心配性で面倒見のいいとても優しい人なの」
「そうか…本当によかった」
やっと私が笑顔を見せたのを見て、お父さんはほっとした顔で肩をおろす。
その後も今までのこと、世那くんとの馴れ初めなどたくさん話した。
今回連絡が来るまでの私の日常に、お父さんはいなかった。
大好きだった両親の離婚理由も知らされないまま過ごした15年間は決して楽しいものではなかったけど、今お父さんの安心した顔が見れて少し過去の辛い記憶が少し薄れた気がする。
こんなことで、と思われるくらい小さなことかもしれない。
それでもいい。
報われた、という言葉を使うのはおかしいのかもしれないけど今までの辛かったことは全てこの瞬間のためにあったのではないかと思うくらいには幸せな時間だった。
