無口な担当医は、彼女だけを離さない。



「おとう、さん。私。栞麗だよ」

「し、栞麗、なのか?ほんとに」



私が名前を言うと驚いたのか少し声が大きくなるお父さん。


自分でかけてって言ったのにそんなに驚く?と言うと昔と同じ声で謝られた。



「まさか本当にかけてきてくれるとは思わなくて」

「かけるよ。当たり前でしょ。びっくりはしたけどさ」

「栞麗…怒ってないのか」

「怒ってないよ。でも聞きたいことは山ほどある」

「そう…だよな。ごめん」



謝らせたいわけじゃないのにどう言ってもお父さんは謝ってばかり。


私が聞きたいのはごめんじゃない。


今すぐ会いたい。15年分話したい事、たくさんあるんだもん。



「お父さん。私ね、ほんとにお父さんのこと怒ってないし、恨んでもないよ。今はただ…会って話したいだけなの」



少し沈黙が続いたと思うとお父さんは「ありがとう」と一言呟いた。


お父さんの声は少し掠れていて弱弱しく今にも潰れてしまいそうな感じ。


その違和感はこの後すぐに分かることになる。



「会う場所、どうする?というかお父さん今どこに住んでるの?」

「…父さんな、実は今入院してるんだ」

「え?」

「だから後で送る住所の場所に来てほしい。栞麗の地元の方だから少し遠いんだ。ごめんな」

「え、待ってお父さん。入院って…大丈夫なの?」



私達の会話が止まり、音がなくなる。


胸がざわざわする。自分でも混乱しているのが分かって更に動悸が増す。