世那くん、馬鹿だなぁ。


優愛さんの視線見れば分かるよ。私も世那くんが好きだからかな。


あれは…過去の同級生に向ける顔じゃないよ。好きな人に向ける顔だよ。


きっと私もあんな顔してるんだと思う。



「世那くん」

「ん?」

「私のこと…嫌になったら捨てていいんだよ」

「…は?」

「患者と医者に戻りたかったら、いつでも言ってください」



もちろん私はこのままがいい。


ただの患者になんか戻りたくない。


けど…私じゃないなって思ったら、迷わず捨ててほしい。


大好きな人が自分と違和感を覚えながら付き合ってくれるなんてきっと辛いから。



「ふざけんなよお前。俺の気持ち…」



ぐーっと胸が苦しくなっていく感覚。


あ、倒れる。そう思った時にはもう目の前は真っ暗。


最後に感じたのは全身の脱力感と世那くんの体温だった。