最初は聞かせてくれなかった優しい声。
その優しい声に甘えたくなってしまう。
私はただの患者。そんなこと分かってるのに。
「…柊さん」
「ん、?」
「…き」
「え?」
「好き、って言ったら…困りますよね?」
思わず零れ出てしまったその言葉。
私が私欲を出したら終わる関係。そんなこと分かりきっていたはずなのになんでこんなこと言ってしまったんだろう。
2人の間に沈黙が漂う。…終わった。こんなこと言っても柊さんを困らせるだけなのに。
「あー…待って。そうきた、か…」
沈黙の後に柊さんが零した言葉には明らかに戸惑いが混じっていた。
言わなければよかった。後悔しても言ってしまったことの取り返しはつかない。
柊さんがどんな顔をしているのかすらも怖くて顔を上げられないでいる。
「栞麗、ちょっと顔上げて」
「でも、」
「お願い。顔見て話したい」
ああ、振られるんだ。短い私の初恋が終わろうとしている。
私は覚悟を決めて顔を上げた。
しかし私の目に入ってきた柊さんの表情はなぜか少し頬が緩んでいて。
「…え?」
「早かれ遅かれ俺から言おうと思ってたのに先越されたわ」
柊さんの言葉が頭の中でループする。そして意味が分かった途端、思わず涙が零れた。
まさか泣かれると思っていなかったのか泣き出した私を見て柊さんはすごく焦っていたけど。
数秒前まで振られる覚悟をしてたから感情の落差でよく分からないけど、嬉しい。
