無口な担当医は、彼女だけを離さない。



柊さんの口から患者、という言葉がたまに出る。


その度に突き放された感覚になるのはなんでだろう。本当に、それだけの関係なのに。



「変な男に引っかかられたりしたら俺が無理だし。…クズ男とか好きそうだし」

「す、好きじゃないし引っかかりません!私は真面目な人が好きなのでっ」

「へぇ、栞麗の好み初めて聞いた」



柊さんは、ずるい。


いつもはお前、とかおいって呼ぶくせにたまに私のことを名前で呼ぶ。


私は毎回、不覚にもそれにドキッとしてしまう。


これはきっと男性に下の名前で呼ばれたことがないから。


…柊さんが、初めてだったから。


それだけなはずなのに、最近はもっと呼んでほしいと思ってしまう。


柊さんの低くて、優しいあの声で。