気づけば、走っていた。


教室を出て、校門も出て。


乱れていく髪も、制服も、今はどうでもよかった。


ただ、早く降谷くんのもとへ行かなければ。


そんな考えばかりが、私の体を突き動かした。


なんで……?


なんでこうなってるの……?


なんで降谷くんは学校に来なくなって……。


会えなくなっちゃうの……!?


走って、走って。


たどり着いたのは、いつしかプリントを届けた時に行った、降谷くんの家___……。


「はぁっ……はぁっ……」


激しい息切れが、私の体をさらに重たくするけれど、そんなものは無視して、震える手で、呼び鈴を鳴らした。


大丈夫、大丈夫。


きっと降谷くんはいるの。


だって表札に『降谷』ってちゃんと書いてあるもの。


それでも、震えは止まらない。


なんでかな。


今にでも、満面の笑みで玄関から飛び出してきてくれそうなのに。


そんな様子は、1ミリも感じなかった___……。


なんで……?


なんで……!


それなら、降谷くんがいそうなところを片っ端から……!


もう一度走り出そうとした、その時___……。


降谷くんの家の玄関の扉が、控えめな音を立てて開いたのは___……。


「っ……!」


振り返る、けど。


扉から出てきたのは、40代くらいの女の人。


降谷くんの……お母さん、なの……?


女の人は、私の制服を見ると、少しびっくりしたような表情を浮かべた。


「……何か用かしら……?」


女の人は、少しやつれているようにも感じた___……。