「なんで帰ってないの。もう真っ暗よ」


「失礼だなぁ。委員長が終わるの待ってたんだよ」


てか、俺の名前知ってたんだね。なんて言いながら、よいしょと椅子から立ち上がる彼。


「委員長だからね」


軽く受け流しながら、絵の具の片付けをし出すと、降谷くんは、長めの明るい茶髪を揺らして、かすかに笑った。


「ははっ、委員長はすごいなぁ。自分の仕事じゃないことまでやって」


「……委員長だからね」


あまり今まで接点はなかったはずなのに、馴れ馴れしく……いや、フレンドリーに話しかけてくる降谷くんの方がすごいと思う。


それでも私には、ほど遠い存在。


「あ、そーだ。これあげる。おつかれさま」


そう言って降谷くんが投げたものは、学校内の自動販売機にあるカフェオレ。


温かい。


「……ありがとう」


片付けをしている時も。


帰り支度をしている時も。


降谷くんはジッと座って私を待っている。


「___ねぇ、なんで私を待ってるの?」


そう聞いても、彼は笑って曖昧に受け流す。


「俺が待ちたかったから」


答えになってないじゃない。


そんなことを思いながらも戸締りをして、降谷くんと一緒に教室を出た。


少し肌寒くなってきた季節。


私は、さっき降谷くんにもらった温かいカフェオレを持ちながら、降谷くんと並んで歩く。


そっか、私と降谷くんって、中学校が一緒だったっけな。


帰る方向が一緒なことに納得しながら歩いていると、降谷くんの足音が消えた。


「?……降谷くん、帰らないの?」


「え……?あ、ごめん!なんかめまいして」


「ほら、寒い中私のことなんて待ってるからじゃない」