聖なる夜に王子様と初めての口付けを

「おかゆ、作っといたから。食べるでしょ?」

「うん……」

風邪を引いているからだろうか。

それともクリスマスにひとりぼっちで、寝込んでいたところを心配して、千歳が、わざわざ訪ねてきてくれたからだろうか。

千歳に優しくされると、なんだか居心地が悪い。ソワソワして、落ち着かなくなる。

(何これ……)

この気持ちに覚えはあるけれど、それを肯定する勇気も確信もない。

「はい。熱いから火傷しないようにね」

千歳は、ダイニングテーブルに、お粥の入った器を2つ並べた。ブラをつけていない私は、千歳が、かけてくれたブランケットを胸元で隠しながら、腰掛けた。

「いただきます。千歳も、おかゆ?」

千歳は、左手でスプーンを持ち上げながら、ゆるりと笑った。

「せっかくのクリスマスだしね。僕だけ唐揚げとか、ピザとか食べても良かったんだけど、実花子が胸焼けしたら可哀想だし、僕のおかゆ、絶品だからね」

「絶品って自分でいうものなの?」

「まぁ、食べてみてよ」

私は、千歳に言われるがまま、お粥を一口、口に入れる。はちみつ梅干しの甘みと、白ごはんに味付けされた塩気に、鰹節の香ばしさが合わさって、気づけば、私の器は空っぽになっていた。 

「ご馳走様でした」

感想も言わずに、黙々と食べて、平らげてから、ようやく顔を上げた私を見て、千歳がクククッと笑った。