「……え?……何、で?」

目を開ければ、すぐに、綺麗な二重瞼がこちらを見下ろしていた。

そして、握られていた自分の掌を、私は振り解くようにして、慌てて布団に仕舞う。

「実花子、うなされてたけど?大丈夫?」

私は、何度も目をぱちくりとさせた。

ーーーーだってさっきまでは、居なかった人物が、自分の部屋に居るのだから。

「千歳?」

「他に誰に見える訳?」

「どうやって……入った、の?」

「鍵くらい閉めなよ。僕じゃなかったら、実花子襲われてるからね。分かった?何度連絡いれても、電話しても出ないから、きてみたけどさー。もう、素直に言えばいいでしょうが。風邪引いたって」

同期であり、同僚であり、最近は、飲み友達である、北沢千歳(きたざわちとせ)が、私を呆れた様子で眺めている。

慌てて起き上がると、千歳が、すぐに掌を額に当てた。

「あ、熱下がったね」