聖なる夜に王子様と初めての口付けを

「ん?どした?」

リビングで、冷蔵庫からケーキを取り出してテーブルに置きながら、千歳が振り返る。

「メリークリスマス。いつもありがとう」

可愛くない言い方とぶっきらぼうな渡し方に、自分でもほとほと呆れてしまう。

千歳は、紙袋を受け取ると、すぐに中身を開封して取り出した。

「巻いてみてあげる」

千歳から、取り上げて千歳の首に巻き付ける。

1時間も悩んで買ったグレーのチェックのマフラーは、思っていた以上に千歳に似合っていた。

「実花子、ありがとう。大事にするね。マフラーも実花子の事も」

千歳が、にこりと微笑んだ。その笑顔に、また鼓動が、一つとくんと跳ねた。

私は、千歳の肩に両手を乗せると背伸びする。
今なら、ちゃんと言葉にできる気がした。

「千歳……好きだよ」

「僕も実花子が好きだよ」

千歳が、私の言葉にすぐに言葉をかぶせると、意地悪く笑いながら、愛おしそうに私の頭を撫でた。