「ケホケホッ……最悪」

ベッドに座り、咳止めを飲みながら、体温計を脇に挟む。

壁にかかっているお気に入りのアンティークの時計の秒針が30秒通過したところで、正確に体温測定完了の音が響く。

「37度3分か……」

昨日、寝る前は38度ほどあった熱は、大分下がったが、夜にかけて、また上がるかもしれない。喉も痛むし、体も怠い。

(千歳にラインするか)

私は、よろよろと立ち上がった。

ベッドサイドのデジタルカレンダーの表示は、December 25th。世界中のカップルが、浮き足立つ、カップルの為の日といっても過言じゃないかもしれない。

「はぁーあ。今年もクリスマスもひとりぼっちか……」

颯と別れてから、誰も好きになれない私にとって、毎年やってくるクリスマスは、憂鬱で仕方ない。

それでも今年のクリスマスは、千歳(ちとせ)が、ミシュラン3つ星のイタリアンをご馳走してくれるとあって、密かに楽しみにしていたのに、風邪をひくなんて、本当にタイミングが悪い。

「神様って、本当イジワル……」