教室の前の方で、キャハハッと明るい声が上がる。

そんな声をBGMに、私は数学の問題集を広げている。


私の名前は野原 優。
中学までの友達からは、ユウとかユウちゃんとかって呼ばれてたけど、ここにはそんなふうに呼んでくれる友達はいない。

ここでの私は、地味で真面目な「野原さん」だ。




今から2ヶ月ほど前。

高校受験の大事な大事な時期に、
階段から落ちてまぁまぁの怪我をした私は、
志望していた学校の入試を受けられず、
なんとか入れたのがこの高校。

地元でも有名な、いわゆるセレブ系学校。


……ほんと、場違い。


ウチはそんなにお金無くて、
公立に行くつもりだったのに、
こんなお金かかる学校に入っちゃって、
お父さんとお母さんに悪くて。

だから、せめてお小遣いくらい自分で稼ごうと、
放課後はコンビニでバイトしてる。


けど、周りの子たちは。
ブランド物のバッグは当たり前だし、
スタバで飲み物テイクアウトして登校してくるし、
スマホはみんなiPhoneの最新モデルらしいし…


なんていうか、住む世界が違う。


そんなクラスメイト達の会話についていける訳もなく、気がつけば、このぼっち状態。


幸い、イジワルな子とかはいなくて、
いじめられて嫌な思いをしているとかはない。


まぁ、他の子たちはみんなキラキラと高校生活を楽しんでて、
私に興味ある子なんていないって感じかな。



正直、さみしい。


けど、どうしようもない。


高校生活なんて、たったの3年間。


とにかく勉強して、
大学こそは希望のところに入るのが、今の目標。


っていったって、特に希望もないんだけど…。

あーあ。