昼休み。

席でしおりんとまったり喋っているときだった。中村くんに呼ばれたのは。

「あの、遠山さん」って。

中村くんと話したこと無かったからびっくりして、

「は、はい」

なんてちょっと噛みながら返事してしまった。

「なんか、2年生の先輩が呼んでる。遠山さんのハンカチ拾ったらしくて。えっと、俺と同じ部活の立花想太先輩って人なんだけど、優しい先輩だから、大丈夫」

「え…」

「あ、れいれい昨日ハンカチ落としてたもんねー、良かったね優しい人いて」

と、しおりんが笑いかけてくれる。

「うん…」

たちばな、そうた…
聞いたことあるような気がするけど…

「ほら、あの人」

中村くんが指した廊下には、背の高い2年生の先輩がふたり立っていた。

「わかった、ありがとう」

中村くんにお礼を言って席を立つ。

「いってら〜」
というしおりんに、

「いってくる〜」
と返し、中村くんの後について教室の入口に立つ。

「想太先輩、呼びました。じゃ、俺、失礼しますね」

「お、ありがとね」

そうして中村くんは教室を出ていき、自然と私は今喋った人の目の前に立つことになる。

少し離れた場所にいるのは、お友達かな。2人とも背が高くて、少し気後れしてしまう。

目の前の人を見上げると、目が合った。

穏やかで、優しい目をした人だった。凪いだ海のような、暖かい春風のような。

この人、この人…やっぱり、私、何処かで会ったことある。