ああ、思い起こせばリカちゃんくらいの時に彼女と付き合い始めたんだっけ。
五年も付き合ったのにあっけない別れだったな。
ていうか五年も付き合ってたのかぁ。

「はぁー」

気を抜くとため息が出てしまう。

「どうかしたんですか?」

再び戻ってきたリカちゃんに尋ねられるほど大きなため息が出ていたらしい。

「いや? 別になんでもないよ」

「……? なんか、元気ないですね?」

「そうかな?」

「そうですよ。今日は全然笑顔じゃないです」

「……え?」

「……?」

「俺、笑ってない?」

「笑ってなくはないですけど、何て言うか、いつもと違う? みたいな? 先輩は太陽みたいに笑っててくれないと」

「太陽かぁ」

呟く俺にリカちゃんは不思議そうに首を傾げる。
今の俺にとってみてはリカちゃんが太陽のように見えるんだけどな。

でも、そっか。
そんな風に俺のことを見てくれているんだと思ったら、急に心が軽くなった気がした。

「ありがとな」

お礼を言えば、リカちゃんはますます不思議そうな顔をする。

「よくわからないけど、どういたしまして」

首を傾げながらもコテンとはにかんだように笑うリカちゃんに勇気づけられ、俺の頭から元カノとのモヤモヤがすぽんと抜けていった。

でも本当はこのとき恋に落ちたのかもしれない。
それからしばらくしてリカちゃんのことを意識するようになり、二年ほど片想いすることになるのだから。

人生とはいつなにがきっかけで変わっていくのかわからないものだ。


【END】