プールサイドでは航太が忙しなく働いていた。
リカは姿を見つけると駆け寄る。

「航太先輩!」

「リカちゃん、どうした?」

「どうしたじゃないですよ!ちょっと来てください」

「わわっ、ちょっと待って――!」

リカに引きずられるようにして用具室に連れ込まれた航太は、目をぱちくりさせた。
まるで壁ドンされたかのように追い詰められて、何事かと思う。

「こんなとこに連れ込むとは、リカちゃんも大胆だなあ」

「そんなこと言ってる場合じゃないです」

「えー?」

「見て、これ!」

リカはTシャツを脱いだ。
一瞬ドキリとした航太だったが、いつもの指導用水着を着ていることに安堵する。

「ん、今日も可愛い!」

「そうじゃなくて……き、キスマーク!」

「え? ……あちゃー、そりゃ見えちゃうな。ごめん! 位置がずれた。ただ、めっちゃくちゃ可愛い。好き」

「いや、そんなこと言ってる場合じゃないです。もうっ、今からレッスンなのに~!」

プンスカと怒るリカも可愛いなと眺めつつ、調子に乗ってキスマークを付けてしまったことを航太は少しばかり反省する。