先輩が愛してくれた本当のわたし


航太の指がリカの指先に触れた。
リカはビクリと肩を揺らす。

ほんの少しだけ指が絡められて、その指先から伝わる航太の体温がとても温かい。
さわりさわりと擦られる指先に全神経が集中したかのように、もうそのことにばかり意識が持っていかれるようだ。

「せ、せんぱい」

「んー?」

「……変なことしないよね?」

「しないよ。そりゃ、リカちゃんが望めばするけど。望んでないでしょ?」

「……」

「手だけは触ってもいい? リカちゃんの手、気持ちいい」

きゅんと体が疼いた気がした。
そんなこと、今までなかったのに。

航太は言葉通り、リカの手、それも指先だけを慈しむように撫でている。
その手つきは泣きたくなるほど優しい。

「どうしてそんなに優しくしてくれるんですか」

「優しいって思ってくれるんだ。嬉しいなぁ。リカちゃんのことが好きだから自然と優しくなるんじゃない?こういうの嫌?」

「嫌じゃないけど、なんか落ち着かないっていうか」

そう、落ち着かないのだ。
波のように心が揺れて、いつか大きな波に飲み込まれてしまいそうな、そんな感覚。
ドキドキと自然と鼓動が速くなっていく。

「俺さ、怒ってるんだよ」

「え、何に? 私に?」

「いや、あいつに。リカちゃんの初めてを奪った男」

「あいつは最低だったけど、私も最低だったから」

「その時は最低だったのかもしれないけど、今のリカちゃんは最低じゃないだろ?」

「最低だよ。最初のことをずっと引きずってて失敗ばかり。今までの恋愛だって全然上手くいかないんだもん」

淳志から始まって同級生、年上、次は失敗しないようにと考えながら付き合った結果がすべて失敗に終わる。
自分の人生に成功はないのかも、と思ってしまう。