オスカルの提案は絆にとってチャンスだった。警察関係者ではない絆にできるのは、事件を思い出して犯人を犯罪心理学の面から想像するだけである。捜査資料もなければ、現場の写真すらない。

「……条件はありますか?」

絆が訊ねると、オスカルはニッと笑う。条件はあれだろうと予想しながら絆は答えを待った。

「FBIの捜査に協力してほしいな。そうしたら、絆にも好きなだけ協力するよ。どうかな?お互い利害は一致してると思うけど」

FBIの協力者など、自分に務まるかわからない。もしも推測を誤れば、誰かの人生を壊してしまう可能性もある。そう思うと、恐怖から絆の手が震えた。だが、絆の頭の中に真っ先に浮かんだのはーーー。

(光里姉……)

愛する人と永遠を誓うはずだった。地獄から連れ出し、普通の生活を取り戻してくれた。絆にとってかけがえのない人だった。そんな優しく強い人を犯人は殺し、未だに逃亡している。絆は震えを誤魔化すように強く拳を握り締めた。

「なります!FBIの協力者になります!なので、光里姉の事件解決に協力してください!」

絆がそう真剣な顔で言うと、オスカルは一瞬にして花が咲いたような笑顔を浮かべる。

「やった!」

子どものようにはしゃぐ彼に、絆は再び抱き締められた。だが、何故かそれを拒否することはできず、オスカルを纏う花の香りに心を落ち着かせていた。