絆がそう答えると、頭に衝撃が走った。最初は何が起こったのかわからなかった。だが数秒かけ、父に頭を思い切り殴られたのだと気付く。割れるように痛む頭に、まだ小学生の絆は泣き出してしまった。

「……ふっ、うえぇぇぇぇぇ!!」

頭を押さえて泣き始めた絆の声を聞き、真由美が「どうしたの!?」と言いながらキッチンからリビングにやって来る。刹那、ボコッという音が響いた。真由美のことも勝が殴ったのだ。

赤く腫れた頰を押さえながら真由美はまだ泣いている絆を抱き締めてくれる。そんな中、勝が怒鳴り声を上げる。

「お前、こいつのことをちゃんと躾けろよ!!男に逆らうとは何様だ!!いずれは男の金で生きていくんだ!!逆らうな!!従え!!それを教えろ!!」

「は、はい……。ごめんなさい……」

真由美が謝ると、ガチャンと大きな音が響く。絆と真由美がまだ食べている途中だった食器を全て勝が床に落としているのだ。大きな音がするたびに絆は体を震わせ、真由美が強く抱き締める。