数十ページにわたるその資料を、アーサーは一ページずつめくっていく。絆は口を開く。

「殺害事件のほとんどは、アーサー教授が住んでいる近所で起きています。もしくはあなたが関わったことのある人物が殺害されています」

「そんなのただの偶然でしょ?」

「偶然じゃありません!」

資料を乱暴に放り投げたアーサーに対し、絆は大声で言う。息が上がる中、絆は続ける。

「あなたはミスをしました。被害者遺族であるあたしと警察、そして犯人しか知り得ない情報をあなたは知っていた」

「情報?」

この事実に気が付かなければ、アーサーが犯人だと絆は思わなかっただろう。オスカルたちが犯人だと言っても、決して信じなかったかもしれない。

「あたしは光里姉が殺害された後、刑事さんにこう言われたんです。盗まれたものがあってもそれを誰にも言うなって。光里姉が婚約者から貰った指輪が盗まれていました。犯人が戦利品として持ち去ったんだとわかりました」