「ま、蓮もそういう所に惚れたんだろうけどね」


「……は、はぁ」

蓮のお母さんの頭では理解していても、こっちは全く分からないんですけど。


あたしが首を傾げていると、タオルを肩にかけた蓮が戻ってきた。


「あっつい」

え、

今、真冬ですよ?


まー、暖房が効いているからかもしれないけど。


「蓮、雪ちゃんと2人でどっか行ってきなよ」


「は!?」

必要以上に大声を出したのは、このあたし。


何、言っちゃってんすか。

まだ、松坂牛少ししか食べてないですよ!?


「チッ…、今頃かよ」

蓮は舌打ちをするも、もう出かける準備をしている。


「…えっ、行くの?」


靴を履く蓮はあたしを見た。


「…行かないの?」


…正直、松坂牛食べたいんですけど…。


「い…、行く」


心とは裏腹の言葉を言ってしまった。


だって、蓮が…、寂しそうな顔してんだもん。


俺が嫌なのか?


そういわれているような、気がしたんだもの。