* *


あたしと蓮が別れるきっかけを作ったあの夜の真実を葵さんは涙混じりに語った。



「本当に、蓮は何もしてないんです!!あたしといる事…すごい嫌がってたし…。それに、あの人は本当にあなたを愛してます!!」


……葵さんは、何でそこまでして蓮をかばうのだろうか。


蓮が好きなら、今は絶好のチャンスなのに…。


「葵さんって、蓮が好きなんですよね?じゃあ、あなたが蓮の傍にいればいいじゃないですか」


嫌味丸出しでそう言うと、葵さんは静かに首を振る。


「……あたしじゃ、だめなんです。南さんじゃないと、だめなんです」



……あたしじゃないと、だめ…?


それは…蓮があたしを必要としているってこと…?


「それに…あたし…、もう結婚するんです」


……え。


「ええ!?」


衝撃的すぎる一言に、あたしはつい叫んでしまう。


周りの人があたしをチラチラみてくる。


「相手は1つ上の大学生なんです。あたしが一昨日、妊娠したって告げたら、結婚しようって言ってくれたんです…」


葵さんは、遠い目をしながら懐かしんだ。


「よ…ッ、よかったですね…!!」


あたしは葵さんの手をとり、涙を浮かばせた。