『ふーん……。』

いつになく冷たい声。


俺を疑っているような…。

そんな声だった。


冷静を装うために、咳払いをする。


「どした?」


葵と視線が重なり合ったが、蓮はそれを気にしなかった。


ただ…

南の様子に気持ちがいっていた。


『あの女の人…誰?』


南の低い声が、全てを静寂にさせた。



「…………」


違う…。

もう、何もない。

もう、ただの他人だ。


心の中でそう叫ぶが、声には決してならない。



「…ッ、違う!!」


今更、言っても、もう…遅い。


『はあ!?何が違うのよ!?あたしが嫌いなら、嫌いって言って、さっさと振ってよ!』


南の狂った叫び声。


南を狂わしたのは紛れもなく自分。


そんな自分が本当…憎い。


蓮は後ろを振り向く。

そして一瞬にして後ろにいる南と視線が絡み合った。

蓮を見る南の瞳は、全てを失っていた。