言えないまま・・・

「またえらく詰め寄ってくるなぁ。ハルは童話作家より、刑事の方が性に合ってるんじゃないの?」

もう!こっちは真面目に考えて言ってるのにちゃかしてばっかり。

だけど、私もいつもなんでこんなにムキになってるんだろう?

「今元カノにできることはしてるつもりだから。その先は、今の延長でしょ?先のこと色々思い悩んでも、今できることやっとく以外しようがないじゃん。話せるタイミングが来たらきちんと話すつもりだし。なるようになるっていうのは、別にいい加減な気持ちで言ってるわけじゃないよ。」

そっか。

なるようになるっていうのは、そういう意味だったんだ。

きちんと説明してもらえれば私もわかるっての。

「わかった。」

私はいつになく素直にうなずいて、紅茶を飲んだ。

アキは何も考えてないようで、ものすごく考えてる奴かもしれない。

だから、いつも自分に無理がない生き方ができるのかも?


「アキは・・・、本気で女の人を好きになったことある?」

ふと、口からこぼれてしまった。

「聞きたい?」

アキは少し真面目な顔で聞いてきた。

聞いてしまったものの、正直聞いてみたいような聞いてみたくないような微妙な気持ちになる。

私は目をそらして、答えた。

「アキみたいな人が本気で誰かを好きなるって、なんだか信じられないもの。でも、もしいたんなら、どんな相手だったのかなぁって。」

「なるほどね。」

アキは、ちらっと腕時計を見た。

この後も、誰かと約束してるんだろうか?