タクシーを降りて、家の窓を見上げると、電気は灯っていない。

直太はまだ帰っていなかった。

ホッとして玄関を開ける。

ゆっくりと靴を脱いでリビングへ向った。

そして、そのまま倒れ込むようにソファーに横になった。

アキ。

別れ際の言葉が気になる。

なんだかもう会えないみたいな言い方だった。

どうして?

もし、もう会えないなんてことがあったら、私はどうかなってしまいそう。

私は、いつの間にか本気でアキを好きになっていたんだ。

自分では認めたくないから、必死に否定してきた。

そして、その言葉を自分の心の中で少しでもつぶやいた瞬間、色んな大切なものが壊れていくと思ったから。

でも、アキの気持ちを知った今。

自分の気持ちを伝えないでいることは賢明だったの?

ふぅ。

体が熱い。

ゆっくりと体を起して、体温計を脇に挟んだ。