「え?」

突然投げられたその言葉は、少し苛立ちを含んでいるように感じられた。

「なんか、いつも下向いてて目合わないから。なんでだろうって思って」
「下、向いてる…?」
「そう、自覚ないの?」
「うん…なかった、ごめん」
「…なんで、謝んの?桜庭さん、おどおどしてるように見えるけど、俺なんか怖がらせるようなことした?」
「え、そんなこと…」
「ごめん、俺、結構誰にでも軽い感じで話しかけちゃうんだけど、迷惑だったかな。さっきも、プリント貸したのとか、余計なお世話だったかもって思って。なんかさっきから俯いてるから」

そう一気に言い終わると、橋本くんは困ったように笑って、私のほうに向けていた顔を逸らしてしまった。
なんか、胸が痛い。直接痛みを感じたわけじゃなくて、自分ではない人の痛みを他人事ながらに自分も一緒に感じているような。それほどに橋本くんが言っていることが、自分に向けられたものだと認めたくなかった。怖かった。