笑っている乃愛も見ても安心なんてできるはずがない。
乃愛が本当に心の底から笑っているのかそうじゃないのか、あたしだってそれくらいはわかる。
今の乃愛は、無理して笑っている。傷が深すぎると、怒ることも泣くこともできなくなってしまうんだろうか。
「……乃愛は悪くないよ。絶対、悪くない」
結局、そんな陳腐な台詞しか吐けなかった。
「ありがと、チナ。あ、じゃあさ、気晴らし付き合ってよ」
「もちろん! なにしたい? あ、電車でどっか出かける?」
「あたしお酒飲んでみたい。一緒に飲もうよ」
「ええ⁉ そ、それは無理だよ!」
「大丈夫だって。みんな隠れて飲んでるよ?」
みんな飲み会とかしてたり、煙草を吸ってる子もいることは知ってる。煙草を吸わないあたしは、吸ってる人なんか匂いですぐにわかる。
だけど小心者のあたしは、お酒や煙草なんてまだまだ早いと思っていた。いや、実際に早いのだけど。
今や茶髪だしメイクしてるしスカートだって短いし、グレーの制服に白のタイは微妙だと言う乃愛に影響されて市販のリボンをつけたり、高校生に憧れて市販のカーディガンを着たりしてるけど。
……まあ、思いっきり校則違反してるけど。
どれも最初はドキドキしたし、たぶん乃愛や友哉がいなかったら、あたしは入学当初の地味なままだったと思う。
「だ、ダメだよ! だってあたしたちまだ中学生なんだよ?」
「ええー。チナってほんと真面目だよね」
「そうかなあ……。だって」
ガチャ――と音を立てて突然ドアが開いた。