「いやいや、別にそーゆうつもりじゃねえんだけど! 妹ゲームやってたって言うから俺もやりてーなと思っただけだよ」

なにがそんなにツボに入ったのか、ついにお腹を抱えてけらけらと笑い転げる。

あんまり笑うから急激に恥ずかしくなって、自分で顔が真っ赤になったのがわかるくらい一気に熱くなった。

あたしだってそういうつもりで言ったわけじゃない。

「そうじゃなくて! ……もう勝手にして!」

弁解しようとするもうまい言葉が見つからず、まずは一刻も早くこの羞恥心を和らげる作戦に出た。

それも虚しく、よっぽどツボに入ったらしい彼は、堪えきれない笑いをくすくすと漏らしながら「隣座ってもいいですか?」なんて言ってくる。

いいですかもなにも、他に座るところはない。

お世辞にも広いとは言えない六畳の部屋に、マットレス、勉強机、テーブル、テレビ。

ただでさえ座れるスペースなんて限られているのに、テレビが見える位置に座るとなればベッドの上しかない。

絶対バカにしてる。

もう気を使うような相手じゃないと判断したあたしは、もう一度「勝手にして」と吐き捨ててスタートボタンを押した。

瞬時に敵だと判断せざるを得なくなったその人は、『本田(ほんだ)悠聖(ゆうせい)』というらしい。

なんのこだわりなのかわからないけれど、わざわざ紙に書いて漢字まで教えてくれた。

その文字を見ながら頭の中で密かに「いやなひと」とふりがなを振ってインプットした。

春斗と同じ、二歳年上の高校一年生。呼び捨てでいいと言われたから呼び捨てすることにした。