いつもと少し違う友哉を見たのは、付き合って二ヶ月が過ぎた九月の半ば。友哉の部屋でいつものように何度もキスをしていると、友哉があたしを抱き締める手に力を込めた。
いつもは数は多いけど短いキスしかしないのに、力がこもると同時に、友哉は唇を離さなかった。少し息苦しかったけど嫌ではなかったから、何度も角度を変えながら続ける友哉に、あたしも必死に応えた。
少しだけ離れた唇から息が漏れる。
「チナ大好きだよ」
いつものようにささやいた友哉は、また唇を押し当てた。
夕日が差し込む部屋に、ふたりの吐息が小さく漏れる。その息苦しさも嫌じゃなかった。というか、正直に言えば圧倒的に混乱が勝っていた。
――もしかして、このまま……。
そんな不安が頭をよぎった時、友哉は我に返ったようにはっとして唇を離した。
「ご、ごめん、チナ、大丈夫?」
「う、うん、大丈夫」
なにが大丈夫なのかは自分でもよくわからない。
なんだかふたりであわあわして、頭をくしゃくしゃと掻いた友哉が言った。
「……俺、チナとしたいと思ってるから」
かすれた声に、あたしはなにも答えられなかった。
ただただ混乱して、頭が真っ白だった。


