変態かはわからないけれど、人前でチューとか平気でできそう。

「俺はこのままここで話してるだけでもいいけど、チナちゃん楽しくないでしょ」

はっとした。

気にしてたんだ。当たり前だ。いくらなんでも感じ悪すぎる。

しつこく誘われたからなんて言い訳をしていても、今日来たのはあたし自身の意志なのに。

他に好きな人ができれば――なんて、そんなのは嘘で。いや、七割くらいは本気なのだけど。

本当は少しでも現実逃避をしたくて、なにも考えなくて済む相手と会うことを選んだだけ。

宗司くんはなにも悪くない。完全にあたしの八つ当たりだったのだ。

「……ごめんなさい。感じ悪すぎだよね」

「いいよ別に。それに、俺といるとこ人に見られたくないんでしょ?」

「え?」

「さっきからきょろきょろしすぎ」

バレてたんだ。

いくら違う学区とはいえ、バスで十五分程度の距離なんてじゅうぶん行動範囲内だ。

特に友哉なんかは友達といろんなところに行っているから、誰かに見られる可能性も頭の片隅にあった。

「……ごめんなさい」

「いいって。こないだ俺ら一曲も歌ってないしさ。行こうよ」

発言は外見通りチャラいけど、悪い人……ではないんだろうか。

ずっとにこにこしている宗司くんにつられて、あたしも肩の力が抜けたのか、ふっと笑みがこぼれた。