……だから。なんでそうなるんだ。
話が全然嚙み合わない。もし彼女がいたら今すぐ帰ろうと思っただけだ。
普通は彼女がいたら他の女とふたりで会ったりしないと思うけれど、宗司くんはわからない。いや、平気で会いそう。
「いないよ。チナちゃんが彼女になってくれる?」
「なるわけないじゃん」
「はは。ひどいなあ」
「ていうか、絶対本気じゃないでしょ」
「え、全力で疑ってくるじゃん。まあいいや、ゆっくり口説くから」
口説くから、って。
今度は困ったように眉尻を下げて笑って、ちらりとスマホに目を向ける。
女の子からメッセージでもきたのかとまた疑ってかかると、宗司くんは下げた目線を上げてあたしを見た。
「チナちゃん、門限何時?」
「特にないけど、晩ご飯までには帰るよ。六時半くらいには出る。……なんで?」
言いながらあたしもスマホで時間を確認すると、学校が終わってすぐに来たから、まだ四時を過ぎたばかりだった。
「そっか。じゃあうち来る? ここから近いし」
「はっ?」
いやいやいや、「じゃあ」ってなんだ。危うくココアを吹き出しそうになった。
「行くわけないでしょ!」
「なんだ、残念」
「バカじゃないの⁉」
「冗談だよ。時間大丈夫ならカラオケでも行かない?」
冗談なんだ。もっとまともな冗談にしてほしい。
……いや、本当にそうだろうか。万が一あたしが頷いたら普通に連れて行かれた気がする。
「いいけど……なんで? え、まさか、カラオケでなにかする気じゃ――」
「しないから。いくらなんでも疑いすぎだから。カラオケなんて廊下から部屋ん中丸見えだから。俺そんな変態に見える?」
疑うのは宗司くんの言動のせいじゃん。