いつもは新学期が待ち遠しいのに、今回ばかりは憂鬱で仕方ない。
一ヶ月会わなければ少しは平気になるかもなんて、どうしてそんなこと考えていたんだろう。とても平気になんてなれなかった。
椎名の背中を見ているのは辛い。椎名はもう後ろを振り向いてはくれない。
きっとまたすぐに席替えがあるし、離れたほうが楽になるに決まっているのに、離れたら離れたでもう本当に関わりがなくなりそうで嫌だ。
もしまた近くの席になったとしても、話しかける勇気なんかないのに。
そんなあたしに誰かが「諦めなさい」と言いたいのか、席替えは見事に椎名と離れた。
トドメは、新学期早々、椎名と早百合ちゃんが付き合ったという噂が流れていたことだった。
椎名に彼女ができてしまったら本当に失恋だなんて、もうとっくに失恋しているのに、悪あがきにすらならない。
椎名は「別れたい」とはっきり言った。すごく冷たい目をしていた。もう戻れないことくらいわかってる。
早百合ちゃんのこと好きになったのかな。好きって言うのかな。キスするのかな。
あたしにしてくれたのと同じように、もしかしたらそれ以上に、優しくするのかな。
「かわいーな」って笑うの?
これから椎名の中で、あたしの存在はどんどん小さくなっていく。ううん、もういないかもしれない。きっと早百合ちゃんで埋まっていく。
あの日、嘘さえつかなければ――椎名は今でもあたしのことを好きでいてくれたのかな。
女の子に囲まれても、早百合ちゃんに告白されても、断っていたのかな。今も隣にいるのはあたしだったのかな。
いつまで経っても、そんな後悔がなくなってくれない。いくら後悔したって、もう戻れないのに。