だからあたしは、乃愛はすごく純粋で一途な子なんだというイメージがついて、ずっとそう思っていた。

疑念の目を向けているあたしを見て、乃愛は観念したように小さく息を吐いた。

「実は最近……っていうかずっと前から彼氏とうまくいってないんだ。新しい出会いがあってよかったっていうのが本音」

声のトーンを落とし、眉尻を下げて力なく微笑む。

うまくいってないなんて初めて聞いた。しょっちゅう喧嘩してるけどなんだかんだ続いてるから、喧嘩するほど仲がいいってよく聞くしな、なんてのほほんと考えていたのに。

「ほんとそれだけ。彼氏のこと、正直もう好きなのかよくわかんないし。でも別れるきっかけがないから、なんとなく続いてるって感じなんだよね。たぶん向こうも同じだと思う」

「……そうなんだ」

「他にいい人いたら別れるきっかけになるのになって、正直ずっと思ってたから。健吾くんに声かけられた時、ほんとにタイプだったし、まあいい機会かなーと思って。あ、でも遊んだりはしてないよ、ほんとに今日が初めて」

「最低って思った?」って付け加えた乃愛に、あわてて首を横に振る。最低なんて思わない。

「……うまくいってないなら、言ってくれたらよかったのに」

「どうしても言えなかったんだよ。だってさー、チナが羨ましかったんだもん」

「羨ましい?」と首をひねった私に、乃愛がふっと笑った。