もちろん見栄を張っているわけじゃない。
ただ「いない」って答えたら、また椎名と別れた日のことを、椎名と早百合ちゃんの後ろ姿を思い出してしまいそうで。
「いる」と嘘をついてあしらうのが一番手っ取り早いと思うのに、そんな嘘をついたら、もっと苦しくなりそうで。
「……いないけど」
結局、少し泣きそうになりながらバカ正直に答えた。
「あ、まじ? ラッキー。じゃあLINE教えてよ」
やっぱりチャラい。外見からしてチャラいけど、発言がやっぱりチャラい。
ていうか、なにが「じゃあ」なんだ。
「結構です」
「なんで?」
おまけにしつこい。
「彼氏いないなら別にいいじゃん。無駄にスタンプ連投とかしないから」
してきそうな感じするんだけど。
このカラオケにあと何時間いるのかわからない。フリータイムで入っているならあと三時間はある。乃愛と健吾くんは完全にふたりの世界に入っている。
交わし続けるほうが疲れるかもしれないと思ったあたしは、観念してポケットからスマホを取り出した。教えるだけ教えて、あとは無視するのが一番だと思ったから。
乃愛、あとで絶対殴る。
本当にフリータイムで入室していたらしく、午後六時に長い長い三時間が終わった。
健吾くんはもう少し遊ぼうと言っていたけれど、あたしは「門限があるから無理ですさようなら」と強引に乃愛を連れてその場から去った。


