テーブルを挟んで向かい合う形にソファーが置かれていて、彼らは両側にひとりずつ座っている。

ふたりともモニターがあるほうにちょっとずれて、乃愛はなんの躊躇もなく、あたしにまったく通じないアイコンタクトをしてから黒髪短髪切れ長一重くんの隣に座った。

もうひとり座れるスペースはあるものの、さすがにそこまで空気を読まない行動はできない。

生まれたての小鹿のほうがまだマシなくらいたどたどしい動きで、渋々もうひとりの男の子の隣に座った。隣といえるか疑問なほど離れて、ソファーの端っこに。

どうせずれるなら、片側のソファーにふたりで座ってくれたらいいのに。なんで初対面の男の子の隣に座らされているのか。

乃愛と黒髪短髪切れ長一重くん――健吾(けんご)くんというらしい――が会話に花を咲かせる。

会話の中からいくつかのキーワードを拾っていくと、どうやらふたりが知り合ったきっかけはナンパで、遊ぶのは今日が初めてらしい。

乃愛は初対面でも誰とでも打ち解けられる。だけどナンパされて連絡先を教えたなんて今まで聞いたことがない。

「ふたりともすげー可愛いね。中二だっけ?」

なに歌おうかな、と盛り上がっているふたりを唖然としながら見ていると、隣に座っている童顔茶髪ピアスくんが言った。

可愛いって……なにこの人。初対面なのに馴れ馴れしい。全然嬉しくない。

末広二重のくりっとした大きなたれ目が印象的で、女の子みたいに可愛い顔をしている。犬系男子っていうやつだろうか。

犬は大好きだけど彼にとても好感が持てないのは、なんとなく胡散臭い笑顔と全身から滲み出ているチャラ男オーラのせいだ。

「……そうですけど」