別れた翌日からはちょっとした拷問だった。
あたしたちは席替えがある度に細工をしていたから(たぶん先生にバレていたけど)、あたしと乃愛、椎名と友哉はずっと近くの席で、椎名は今あたしの前の席なのだ。
勇気がないあたしは、ちゃんと謝ることも、まだ大好きだってことも、やり直したいってこともなにも言えない。全部言ったところでもう遅いのだけど。
唯一の救いは、もうすぐ冬休みに入ること。一ヶ月近く会わなければ、少しは楽になるかもしれないし――なにより、仲良く話している椎名と早百合ちゃんを見なくて済む。
冬休みまで、毎日毎日辛かった。一日が信じられないほど長く感じた。
毎日毎日、決して振り向いてくれない椎名の背中を、放課後になれば早百合ちゃんと下校する椎名の背中を、黙って見ていることしかできなかった。
「チナ、カラオケ行かない?」
「今から? 行きたい! 友哉たちも誘おうよ」
冬休みまで残り一週間になった頃の土曜日。乃愛の部屋でごろごろしていたあたしは、跳ねるように起き上がって準備を始める。
「あ、今日はダメ。あたしの友達もいるから」
言いながらスマホをひょいっと上げた。
「友達? 誰?」
「他校の子なんだけど、ちょっと前から遊ぼうって誘われててさ。友達とカラオケいるから来ない? って今メッセージきた」
乃愛とはずっと一緒にいたから、あたしの知らない友達が他校にいるなんて知らなかった。
そんな話聞いたことがないし、最近知り合った子だろうか。どういう繋がりだろう。
「いいけど、あたしもいていいの?」
「うん。よかったら友達も一緒に遊ぼうって」
「そっか。行く行く」