部屋に入った途端に涙腺が爆発して、乃愛に抱きついて、思いっきり泣いた。

「ちゃんと話せた?」

「……うん。別れた」

「……そっか。頑張ったね」

「……乃愛」

「なに?」

「……別れたくない」

「……うん」

「好きだったのに。本当に大好きだったのに」

「うん、知ってるよ」

「……あたし、なんで嘘ついちゃったんだろう」

「あたしもごめんね。言わないほうがいいなんて……無責任だったね」

それは違う。乃愛は悪くない。

嘘をついたのはあたし。言わないと決めたのもあたし。

乃愛はかばってくれたけれど、早百合ちゃんの言う通り、一番悪いのはあたし。

最初は罪悪感があったのに、言わなければバレないんじゃないかと思うようになっていた。たったひとつの嘘でこんなことになるなんて想像していなかった。次第に嘘をついたことさえ忘れかけていた。

なんて浅はかで最低だったんだろう。

どうしてあの時、ちゃんと正直に言わなかったんだろう。

あたしが今泣いてる以上に椎名だって傷ついたはずだ。彼女と友達に隠し事をされていたなんて傷つくに決まってる。初めて好きになった人を傷つけてしまった。

「別れたくないよ――」

椎名に言えなかった言葉を乃愛にぶつけたってしょうがないのに。

拒絶されるのが怖くて泣くことしかできなかった、弱虫な自分が嫌だ。

あたしの初恋は――後悔だらけのまま、たったの半年で終わりを告げた。