――嘘ついてごめんなさい。傷つけてごめんなさい。椎名が好き。別れたくない。

本当に伝えたい言葉たちが、止まらない涙と一緒に流れていく。

「……椎名は……別れたい?」

あんなに怖くて訊けなかったことを、震える声で口にした。

本音なんて、言えるはずがなかった。願いとは裏腹に、頭ではもう終わりなのだと、もう戻れないのだと確信しているのだから。

「別れたい」

訊いたのは自分なのに、椎名の口からはっきり出たその言葉に眩暈がした。

「……じゃあ俺帰るから。バイバイ」

あたしの返事を待たずに、振り返りもせずに、椎名は背中を向けて去っていった。

なんでこうなっちゃったんだろう。

なんでこんなにあっけなく終わっちゃったんだろう。

……なんであたし、大好きな人に嘘ついちゃったんだろう。

涙が止まらない。こんな状態で家に帰れない。もしまたお姉ちゃんと鉢合わせたら最悪だ。確実にトドメを刺されて、いよいよ再起不能になるのは目に見えてる。

あたしはその場から――椎名の背中が見えなくなっても――一歩も動けなかった。

しばらくそこで泣き続けていたあたしの肩に、後ろから来た乃愛が手を乗せた。

泣きすぎてしゃべれないあたしの手をぎゅっと握り、「うちおいで」と言ってくれた。