この恋が運命じゃなくても、きみじゃなきゃダメだった。



いつでもどこでも「チナ大好き」って言いながらくっついてくる友哉。「やめてよバカ」って言いながら突き放すあたし。

相変わらず毎日毎日メッセージを何通も送ってくる友哉。ご飯中以外はなるべく返すようになったあたし。

たくさん遊んだ夏休みも中盤に差しかかろうとしている頃、あたしたちは付き合って一ヶ月が経った。

「今日で一ヶ月だな! チナなんかちょーだい」

ふたりで会う時は友哉の部屋で会うようになっていた。外でみんなで遊ぶことのほうが多いのだけど、今日は記念日だから、友哉の希望でふたりきり。

「はあ? なんであたしがあげなきゃなんないの」

「冷てーなあ」

発言とは裏腹に、嬉しそうに笑いながらあたしの頭にこつんと頭を重ねる。友哉があたしの肩に手を回して、さらにふたりは密着した。

人前でくっつくのはやっぱり恥ずかしいけれど、ふたりきりなら話は別だ。こういうふうに密着するのはわりと好きだったりする。小さなドキドキ感が心地いい。

そのままたくさん話をした。と言ってもしゃべるのはほとんど友哉で、あたしは小さく返事をしたり、たまに笑ったり、たまにしゃべったりするだけ。

あたしもおしゃべりなほうなのだけど、友哉はあたしを上回るおしゃべりだから、いつの間にか聞き役になっていた。

犬みたいな友哉を素直に可愛いと思う。

乃愛には散々「冷たい」とか「友哉が可哀想」とか言われたけれど、あたしだってあたしなりに友哉のことが好きだ。

というより、たぶんだんだん好きになってきていると思う。

「んー……チナ、やっぱりなんかちょーだい」

「だからなんであたしがっ。てかなんにもないし。友哉がちょうだいよ」

「俺、実はほしいもんあるんだよね」

「え、なに? あたしお金ないよ」

肩に回ったままの手。密着しているふたり。友哉の瞳の色が茶色だとわかるほどに近い顔。

時刻が十七時を過ぎた頃――夕日が差し込む、物が散乱してごちゃごちゃした友哉の部屋で、あたしたちは初めてのキスをした。