この恋が運命じゃなくても、きみじゃなきゃダメだった。



あたし――こんな時なのに。

椎名が最初に呼んだのが早百合ちゃんだったこと、すごくショックだった。

たったそれだけのことなのに、もう椎名の中で、あたしより早百合ちゃんの存在のほうが大きいのだと思い知らされた気がした。

乃愛も早百合ちゃんもあたしも、突然現れた椎名に驚いて、呆然と見ていた。

椎名は、早百合ちゃんだけをまっすぐ見ていた。

「……椎名」

絞り出した声はひどくかすれていた。意気地なしのあたしを一瞥した椎名はやっぱり無表情のまま。

けれど今までとは違う。無表情でも、いつも目は優しかった。

今は、とても冷たい目をしている。あたしのことを軽蔑している。

「……ちょっと、話せないかな」

このままでいいわけがない。もし許してもらえなくても、ちゃんと謝らなきゃいけない。

「いいよ」

家まで送ると言われたけれど、こんな状況で喜べるほど能天気じゃない。

目線を床に落としたまま歩き出した椎名を見て別れを確信した。