この恋が運命じゃなくても、きみじゃなきゃダメだった。



乃愛は怒ると怖い上に止まらない。あたしも怒られたことがあるからよくわかる。

完全にキレている乃愛は、あたしがなにを言っても腕を引っ張っても目もくれず早百合ちゃんを睨みつける。

「呼び出せるなら最初からそうしろよ。陰でコソコソコソコソ卑怯なんだよ」

「乃愛ちゃんに言われる筋合いない!」

「チナだってあんたに嫌がらせされる筋合いねえんだよ。なにがしたいの? 椎名が好きなら椎名にそう言えばいいじゃん。椎名だってあんたのこと好きならチナとちゃんと別れるんじゃないの?」

「椎名はチナちゃんに裏切られて落ち込んでるんだよ! だから……」

「それバラしたの誰? どうせあんたでしょ? 結果的にあんただって椎名のこと傷つけてんじゃん」

「一番悪いのはチナちゃんでしょ⁉」

「一番ってなに? それ誰が決めるの? 言わないほうがいいって言ったのはあたしだよ。あんたがなにを知ってんの? 勝手な妄想で決めつけてでしゃばってくんじゃねえよ!」

乃愛を止めることもできず、あたしはふたりを見ているだけ。当事者なのになんて情けないんだろう。

――チナちゃんが裏切ったから。

――椎名が落ち込んでる。

早百合ちゃんが放った言葉は大きな大きな岩となり、あたしの胸にずどんと重くのしかかって動けなかった。

そして頭の中で何度もリピートされる。

「早百合」

ふたりの言い合いを止めたのは、いつの間にかドアの前に立っていた椎名だった。

「なにやってんだよ」