学校祭は大成功をおさめた。
アクロバットを終えた椎名たちに女の子が群がったのは嫌だったけれど、前みたいに泣きたくなるほどではなくなっていた。
あの日、椎名が追いかけて来てくれたことが大きいと思う。あたしは単純なのだ。
確かにアクロバットを披露している椎名は抜群にかっこよかったし(乃愛からしてみれば友哉のほうが完璧だったらしいけど)さすがに今日くらいはしょうがない、と自分に言い聞かせてぐっと堪えた。
クラスでの打ち上げは別日にあるから、その日はすぐに解散。
椎名と一緒に帰りたかったけれど、疲れただろうから今日はやめておこうと思ったあたしは、「お疲れ様」とだけ伝えて帰った。
そんな小さなことを後悔するなんて、夢にも思わずに。
週明けの月曜日から、椎名はあたしを避けるようになった。
避けられていることはすぐに気づいた。
椎名はあたしにまったく話しかけてこなくなって、授業中だっていつも友哉としゃべっていたのに、机に顔を伏せてずっと寝ている。今までも寝ている時はあったけれど、その日はずっと。
休み時間になれば教室を出ていって、放課後は「バイバイ」もなくすぐに帰ってしまった。
疲れてるのかな、とか、機嫌良くないのかな、とか、いろいろ考えた。でも今まで一度もそんなことはなかったのに、急にどうしちゃったんだろう。
あたしは戸惑うことしかできなかった。