この恋が運命じゃなくても、きみじゃなきゃダメだった。



「チナ、今日も練習見に来るだろ?」

九月も下旬に差しかかったある日の放課後。

教室のドアから、ちんたら帰り支度をしていたあたしに友哉が言った。ニカッと八重歯を見せながらあたしの前まで歩いて来る。

「うーん……」

「乃愛たちと一緒に見に来いよ」

友哉ってどうしてこんなに優しいんだろう。

女の子に囲まれることが多くなった椎名をただ見ていることしかできない日が続いてることに気づいて、気を使ってくれてるんだ。

「んー……うん。行くかな」

本当は行きたい。運動をしている椎名は活き活きしているしかっこいいから、その姿を見るのが好き。

だけどあんな光景を毎日のように見て、なにもできない自分が悔しくて、……本当は椎名に誘ってほしいのに、なんで友哉ばっかり気を使ってくれるんだって、椎名にまでイライラしてしまう。

そんな自分が嫌で、ちょっと落ち込む。

「元気出せって。あいつもどうしていいかわかんねえんだよ。言ったろ、女の子苦手なんだって」

わかってるよ、そんなのわかってる。これはただの八つ当たり。思い通りにいかないからイライラしているだけ。

「……ごめん友哉。ありがとう。行こう」

「オッケー、決まり」って笑いながら、あたしの頭にぽんと手を乗せる。

友哉に触れられたの別れて以来だな。あの頃よりだいぶ背伸びたな。顔つきも少し大人っぽくなったな。

そんなことを考えていたら、友哉と付き合っていたことを椎名に隠してるんだって思い出した。

正直忘れていた。あれから一度もそんな話は出ていないし、バレる気配もまったくないし。

思い出したら、あたしも隠し事してるからおあいこだって――椎名な悪いことなんてしてないからまったくおあいこじゃないのに――そう考えて気を落ち着かせた。

無理にでもこんなふうに考えていないと、イライラして爆発しちゃいそう。

あたし、ものすごく嫉妬深いみたいだ。