この恋が運命じゃなくても、きみじゃなきゃダメだった。




夏休みが終わると、肌が焼けている子や、髪を染めたりメイクをしたりする子が増えていた。

夏は人を開放的にさせるんだろうか。あたしの場合イメチェンは冬だったから、他人事のように漠然と考えていた。

なんだか派手になったクラスメイトたち。そして、

「椎名! 髪切った!!」

朝っぱらから教室に響き渡ったのは、友哉のバカでかい声。大音声と「椎名」というキーワードに、反射的にドアのほうに目線を投げる。

つい数日前とは別人のような姿になった椎名がドアから顔を出した。

「へーばっさりいったなお前! けっこうかっこいいじゃん」

いつものメンバーに囲まれている椎名。もちろん今までも何度か髪を切っていたけれど、切ったというよりは梳く程度だったのに、今回は目がはっきり見えるほどばっさり切っている。

「あー、うん。親父が髪切れってうるさくてさ。まあ邪魔だったし」

淡々と言う椎名に視線を送っていたのは、たぶんあたしだけじゃない。

周りを見るまでもなく、教室の雰囲気がどこか色めいていることになんとなく気づいていた。

「椎名って意外とかっこいいね」

自称メンクイの乃愛がそう言うなら、彼女である(椎名にベタ惚れの)あたしの過大評価じゃないのだと思う。

あたしもまったく同じことを考えていた。目にかかっている前髪のせいか、本当は明るい子だと知っていても、やっぱりどこか暗そうな印象は抜けなかったのだけど。

女の子がメイクや髪型で変わるように、男の子も髪型で全然印象が違う。

かっこよくなったと思う。彼氏がかっこよくなって嬉しい。

だけどなんとなく、手放しでは喜べない。

「ヤバイねこれ。モテはじめるよ椎名」

あたしの不安を、乃愛がぼそっと口にした。